次の朝、小鳥のさえずりより少し早く、みんなは起床した。
ケープに包まった男達は、芋虫のようにもそもそと動く。
今は乾季で、日本で言うと、秋のようなカラッとした暑さの気候だ。比較的過ごしやすい季節とはいえ、早朝の森は少し冷えた。
みんなは体を丸め腕を擦りながら起き上がるが、わたしは一晩中、カウルに抱き締められていたので、あまり寒さを感じなかった。
あまりの恥ずかしさに背中を向けて寝たのだが、カウルの体は温かいし、逞しい腕は安心感を与えてくれて、それはもうぐっすりであった。
なんならちょっと、よだれを垂らすほどに熟睡した。
「朝の森って爽やかだねぇ」
深呼吸をして、伸びをする。
足が少し痛むが、昨日の疲れはすっかりリセットされている。
ぐぅとお腹が鳴った。今日の朝食は何かな。
「ゆづかは元気だ」
眠足りないのか、カウルは大あくびをした。
昨日収穫したキノコと、城から持ってきていた干し肉を裂いて炒め、薄くスライスしたバケットに挟んで食べた。
バケットはカチカチになってしまっていたが、歯ごたえがあってこれもまた美味しい。干し肉は、干すときに1度塩漬けにしているため、一緒に噛むと塩気と共にじわっと旨味が出た。
酒のつまみにもなりそうだ。
みんなで輪になって、ドライフルーツを摘まみながら、今日の行程を確認すると、すぐに出発した。
1時間も歩くと、植物の種類が変わってきた。
湿地帯に入ったらしく、足元がぬかるんでいる。
途中、大きな蛇に出会い、悲鳴を上げて飛び退いたのだが、カウルにあれはミミズだと教えられた。
湿地帯によく出るらしい。
日本と同様、なんの害もないとわかると、まったく怖くなくなって、触れるようになった。
「カウル! もっとおっきいミミズがいた!」
興奮して掴んで持ち上げると、プーリーは、よく持てるなと顔を青くしていた。
これほど大きなミミズに育つなんて、土が良い証拠だ。この辺りはどれだけ肥えた土なのだろうと、わたしはワクワクしていた。