なんだか変な匂いがして部屋を見回すと、ベッドの横に、不思議な霧が噴き出す装置があった。
なんだこれは。
フラスコに似た入れ物に、青汁のような液体が入っていて、ボコボコと沸騰している。
理科の実験みたいだ。


熱されてでた霧が、怪しい匂いを醸し出しているらしい。
戻ってきたカウルに「これは?」と聞くとカウルは鼻息荒く話してくれた。


「これは医師が考案した、この国最新の医療機器だ。痛みを和らげる薬草に、熱を冷ます薬草、安眠効果のあるハーブが入っている。
この蒸気を呼吸で体内に取り込むことで、体を楽にし病を早く治すんだ。どうだ?」


どうかと聞かれても、さっき起きたばかりで効果はわからない。
鼻がスースーして不思議な匂いだなぁという印象だ。
それ以外にも、ベッドの周りには飲み物や食べ物が山のように並べられ、なぜか花までも飾られていた。

お供えみたいだぞ。そこまで重病じゃないぞ。

仰々しい看病にびっくりした。
いつも風邪をひいた時は、独りで耐えるのみだったため、誰かに心配され付き添ってもらうのも、なかなか悪くはない。


「ありがとう……おかげで楽な感じするよ」

「そうか!」

厳つい顔が、ふわっと緩む。
ゴツゴツとした大きな手が、おでこの布を新しいものに変えてくれ、そのまま頭を撫でた。


「ゆづかは頑張り過ぎてたからな。少しゆっくりするといい」

「ありがとう。ちゃんと休んで、治ったらまたたくさんがんばるね」

「まる1日も寝ていたぞ。昨日からろくに食べていなかったし腹は減っていないか」

「えっ一日も? すごく空いてる。なんか食べたいかも」

答えると同時に、お腹がぎゅーぐるるるると盛大に鳴った。