***

次に気がついたときには、わたしは城のいつものベッドで寝ていた。うっすらと開いた目に、ぐにゃりと歪む天井が映る。

体中で痛む節々と、ゾクゾクとする背中が、自分の状況を教えてくれた。

あーこれ、風邪をひいたのか。
どうやら熱をだしたらしい。

頭に濡れた布を置くスタイルは、どこの世界も共通なようだ。
布団をたくさんかけられていて重い。全身が汗ばんでいた。
布団の中で、誰かが手を握ってくれていた。手の主を捜して横を向くと、カウルがいた。
布団に伏せって寝ている。
あーこれ、付き合わせてしまったんだ。

「カウル……」

出した声は掠れていた。
唾を飲み込むと、腫れた喉が痛んだ。

「ゆづかっ目が覚めたかっ」

小さく呼んだだけなのに、カウルはすぐに目を覚まし、伏せていた頭を勢いよく持ちあげた。


「フェンの家でいきなり倒れるから心配したぞ。凄い熱だし、医師はただの疲労と風邪だというが、どこか辛いところはないか?」

そうだった。フェンの家でひっくり返った事を思い出す。

「平気。喉が痛いとかくらいだから、寝ていれば治りそうだよ。心配かけてごめんね」

「そうか、今、喉に良い薬茶を持ってこさせよう」

カウルは部屋を飛び出し、扉の外で待機している者に指示を出していた。「へいっ総長!」と元気な声が聞こえたから、きっとロットだ。