そうだ。わたしは飛び込んで来たトラックの下敷きになり死んだのだ。
何が起こったのかを思い出すと、わたしは叫んだ。

「わたしのササミフライ!!」

最後の晩餐を食せずに死んだですって? せめて食べおわってから突っ込んでくればよいものを、柔らかい鶏肉とシソチーズのハーモニーが味わえなかったじゃないか。

ああ、本当になんてことなの。辛い。辛すぎる。

写真撮影などせずにさっさと食べれば良かったんだ。盛り付けとかどうでもいいじゃない。なんなら揚げたてを、そのままキッチンでつまめばよかったのよ。

ハラハラと涙が流れ、同時にお腹がぎゅるるるぐぐぐうううと鳴った。

轢かれた瞬間、痛いとも悲しいとも悔しいとも思わず、ただ「ササミフライ」とだけ思った。お腹がなるのはそのせいかもしれない。これで成仏できなかったらどうしてくれるの。つねにお腹が空いてる地縛霊とか笑えないんだけど。

お父さんお母さん、先立つ不孝をお許しください。墓前にはササミフライを供えてください。