***


ーーーーああ! フェンが本当の名前で呼んでくれるなんて。

ゆづかは胸が熱くなり、泣きそうになった。


「フェン、嬉しいありがとう」


やっと認めて貰えた気がして、フェンに抱きついたまま、ぴょんぴょんと跳びはねた。

昨日から殆ど食べていないから、お腹が空きすぎたせいか、胃が気持ちが悪いけれど。
徹夜しちゃって、太陽の熱が突き刺さるように感じるほど、頭はガンガンとするけれど。

そんなのお構いなしにはしゃいだ。

頑張ってよかった。
喜んで貰えてよかった。
フェンとの距離を縮められた。
わたしは、間違ってない。

まだまだ、リアとしてのやり直し人生は始まったばかりだけど、少しずつ理解者が増え、見方になってくれる人が増えていた。

嬉しすぎて、体が沸騰しているように熱く感じた。

はしゃぎすぎて酸欠でも起こしたかな。
なんだかすごく、クラクラとする。


ああ、なんか体が浮いてるみたい。


「おいっそれ以上くっつくな! 重いんだよ寄りかかるなって」


フェンが嫌そうに、わたしの胸を押す。


「ゆづか、早く離れろ!」


カウルに肩を掴まれ、勢いよくバリッと剥がされる。その瞬間、脳みそがプリンのようにぷるんと揺れた。
そのまま体が後ろに仰け反った。


「あ?」

「ゆづか?」


目を丸くするフェンの両親が、視界の端に映った。

世界がひっくり返る。

わたしはうけを身をとることなく、床にばたーんと倒れた。ガツンと頭を打って、視界が暗くなっていった。

意識の遠くの方で、カウルの慌てた気配を感じた。