「リア姫様。お気持ちは嬉しいのですが、わたしどもにはこんな高価な物を買うお金は……」

「お金? いえいえ、差し上げますって」

「はい?! 家が10軒買えるほどの価値があるのですぞ?!」

「えっ! そんなにするの? まぁまた生えてくるんだし。要らなかったら売っちゃっていいですよ?」

ゆづかは貴重さがわからないらしい。

「なんと……」


両親は呆然とする。
妹は涙を流して喜んだ。

何度も感謝を述べ、床に頭を擦り付ける。
ゆづかは慌てて立たせようとしていた。


「お兄ちゃんがリア姫に頼んでくれたの?」

「ちげぇよ。こいつが勝手にやっただけだ。それと……」

フェンはフンと鼻を鳴らす。


「……それとこいつ、お前も気づいてると思うけど、変わっただろ。
生まれ変わったんだか入れ替わったんだかしんないけど、リアじゃなくて、ゆづかって名前らしいから」

「ーーーーフェン!!」

初めて名前を呼ばれたゆづかは、バンザイをしてフェンに抱きついた。

「あってめえ調子にのんなっ。まだ許したとは言ってねぇぞ!」

「こらフェン! 姫様になんて口の利き方を! すみませんバカ息子が……」

フェンが顔を赤くしている。
散々嫌っておいて、今更必要以上の好意など許さないぞ。

「ゆづか! 俺以外の男に抱きつくな!」

嫌な予感がして、頬ずりをする勢いのゆづかを、フェンから必死に引き剥がした。