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フェン・アゲラタムの実家は、城から比較的近い所にある。
城下には商売が盛んな町が広がる。店が建ち並ぶ賑やかな通りを抜け、さらに隣町へと続く丘を越えると、森の横に集落がある。そこに見えてくる、テラコッタ色の瓦屋根が敷き詰められた可愛らしい家が、フェンの実家だ。
フェンの両親は、そこで薬草となる植物を集め、街中の薬師に売るという仕事をしていた。
元々父親は、石の切り出しの仕事をしていたらしいのだが、娘の病気を治してやりたくて、薬師の勉強をし転職をしていた。
俺とゆづか、フェンの三人は、朝も早くからフェンの実家にいた。
警備隊の総長である俺の来訪に加え、国の催しでもなければ、なかなかその姿を目にすることも叶わないという金の髪の姫まで一緒に現れ、寝起きで出迎えたフェンの両親は、目を白黒とさせていた。
「おい! 何しに来たんだよ!」
「フェンっっ総長と姫様になんて口をっ……」
舌打ちをしながら言ったフェンに、両親は顔を真っ青にした。
フェンは気にもせず、イライラと足を踏みならす。
フェンの妹は、人目を憚って引きこもってばかりいると聞いた。
そのせいか、小柄で線も細く色白であった。
頭を隠すため布を巻き、自信のなさの現れか、それは目元近くまで覆っていて顔は半分しか見えない。
フェンの妹はリアを見ると顔をこわばらせていた。
それは過去のリアのせいだ。状況がわからず、ガタガタと震えるばかりだった。