馬小屋ならぬ駐輪場にゆづかと二人でそこへ向かう。整備係がすでに働いており、せっせとバイクを磨いる。各隊員のバイクが並び光っていた。
そこでばったり、夜回りから戻ってきたフェンとかちあってしまう。
————しまった。
目を合わせないようにすれ違い、バイクに跨る。
魔力を込めながらエンジンを掛けていると、「朝っぱらからデートかよ」とフェンは蔑んだ。
喧嘩になる前にこの場を離れよう。いらぬトラブルは、基より発生させないに限る。
「おい、しっかり捕まっていろよ」
ゆづかに声をかけると、早々に出発した。
しかしゆづかは、悪びれもなく「フェンの妹さんに会いに行くの。行ってきまーす!」と遠ざかっていくフェンに向かって叫んだ。空気を読まずに振り向いて、笑顔で手まで振る始末だ。
「あ、こらっ」
何をバカ正直に言っているのだ。
予想通り、目の色を変えたフェンが凄い勢いで追いかけてきた。
「は?! てめぇ、何を勝手に……!! 待て! おいカウル、止まれえええ!!」
真後ろから聞こえるだ鳴り声と徒ならぬ殺気に、俺はアクセルを全開にした。