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翌朝、ゆづかの叫びで俺は目覚めた。

「出来たあああーーーー!」

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
ゆづかは出来上がった“カツラ”という、ものを上下左右からじっくり確かめると、満足げに頷いた。

「やっとできたか……」

椅子に座り、頬杖をついて寝ていたため、肘が痛くなっていた。それをさすりながら、出来上がったものを眺める。帽子となる布に、昨日までリアのものであった美しい金髪が、それは丁寧に縫い付けられていた。

「すごいな……」

「でしょう? わたしは料理が大好きだけど、裁縫も得意なんだなっ」

ゆづかはカツラを手に掛けてくるくると回す。
ぱっと見、首と踊っているみたいで奇妙だった。

「これを、フェンの妹さんにあげたいの。喜んでくれるかはわからないけど、今までのリアの言動を謝って、わたしなりの誠意をみせなくっちゃ」

ゆづかの気持ちと行動力を、カウルは自分のことのように誇らしく思った。
やはり、ゆづかは以前のリアではない。

「そうか。では、そのように手配しよう。なるべく早くフェンの実家に届くように……」

「え。駄目だよ。これは自分で届けるの」

当たり前のように言うゆづかに戸惑う。

「ーーは? いや、しかし」

「人を介して謝るなんて、社会人としてもってのほか!門前払いだろうが、皿を投げられようが、とにかく自分で謝りに行く。これ当たり前よ」

「は ? しゃ、しゃか……?」

ゆづかは、たまにわからない単語を使う。


「とにかく、自分で届けに行くの! 今すぐ連れて行って!」

「今すぐ?」

「そうよ! フェンの実家は、前にそんなに遠くないって聞いたわ。今すぐ出発よ!」


寝不足のまま、朝食も取らずに城を飛び出した。
ゆづかに至っては一睡もしていないのに、アドレナリン全開でやけに元気だ。