ゆづかは黙々と集中し、話しかけても視線を寄こさなかった。
昼食の時間になっても、その位置から動かない。さらには夕食も食べようとしないので、カウルは見かねて食事をとってきてやった。
口に食べ物を入れてやると、雛のように口だけを開いて受け取った。
「ありがとう、美味しい!」
口は動かしたが、やはり真剣な眼差しは手元に注がれたままだった。
「お腹空いてるんだろう。休憩したらどうだ?」
「うん。でも、もうちょっとだから」
全然言うことを聞いてくれない。
「昼間もずっと畑仕事だったじゃないか」
「うん。でも、水浴びてただけで結局なーんもできなかったし、そんなに疲れてないから」
「そうか?」
力は出なかったが、手のひらは微かに光っていた気がしたのだが……。
光ると言っても、手の周囲の空気が揺らめいているくらいの変化で、気のせいと感じる程度だ。
記憶を失っているせいか、中身が違うせいなのかは不明だが、まだ力のコントロールができないだけで、魔法自体は持っているようだった。
「無理はするなよ」
「ありがとう。大丈夫!」
何度休憩を促してももうちょっとで終わるからを繰り返し、結局、作業は明け方まで続いた。