数日後。

どばしゃーん!と頭に降ってきたのは小魚やアメンボ、ついでに泥が少々含まれた川の水であった。
全身びしょ濡れである。
おでこから垂れる水草と、ポタポタと落ちる水滴を、髪をかき上げながら払い、わたしは目を据わらせた。


「ちくしょう……」

「あ?なんか言った?」

「いいえ、師匠」


水を大量に運ぶのは、リアの力を使うのが便利なのではないかと言われ、わたしは畑で修行をすることになった。
どうやらリアは魔力で天気を操れたらしい。
雨を降らせることが出来る唯一の人間であった。
火や水、風など自然を操る力は警備隊の人達の中でもとりわけ力の強い人達が持つ。
リアはさらに特別だった。
天気を操り、雨を降らせることができた。
この力はノーティー・ワンで唯一であった。
だからこそ奇跡だ、女神だともてはやされたわけだ。

1年の半分が乾季というこの国では、雨季に雨が少ないと農作物のうける影響は大きい。

ちょうど1年ほど前、日照りが続き大ダメージだったところ、リアに雨を召喚できないかとみんなで頼んだら、鼻で笑った彼女に海水を撒かれたという経緯だったらしい。
聞けば聞くほど最低なお姫様だ。
リアはなぜ、それ程までに自国を陥れようとしたのだろう。

そんなこんなで、水を運ぶなら自分でなんとかしろと言われてしまい、力の使い方もわからないわたしは修行をすることになった。
カウル曰く、魔力とは生まれもったもので体に染みついている。少し試していたら思い出すのではないかということだ。

修行も努力もしよう。
しかし、教えてくれる人が問題であった。いや、人には問題はない。師匠とわたしの相性に問題があったのだ。