カウルは見張り役に、先ほどの出来事を口止めすると、わたしの手を引いて牢屋を出た。
どこへ行くのだろう。
地下を出ると、階段をどんどん上がり進んだ。城の上の方は行ったことがない。
上層階は偉い人が多いので入らせて貰えなかったのだ。
掃除はいつも地下や外、低い階層ばかりだった。



何階か上り廊下を進むと、カウルは豪華な扉の前で止まった。
他の部屋の扉とは違い、一際豪華だった。
特別な部屋のようだ。

「入れ」

「え? ここに? なんで?」

「いいから」

背中を押されて入った部屋は、執務室のようだった。
壁一面を埋める書物、装飾が施された机に、積み上がった書類がみえた。
部屋の中にもドアがあり、開きっぱなしになっていたため向こうの部屋の中が見えた。
向こう側に見えるのはテーブルに棚がいくつか。椅子には無造作に服がかけられ、生活感が感じられた。
だれかの部屋のようだ。
それにしても、なんて豪華なんだろう。
植物と花も置いてあって、壁にはタペストリーも飾られている。出窓の装飾もお洒落だ。
わたしの牢屋とは大違い。