「ゆづか!!」

飛び込んできたのはカウルだった。

カウルはフェンに体当たりをして、わたしとの間に割り入ってくれたのだ。


「っか、カウル……」

こ、怖かったー!

慌てて起き上がり彼の服を掴むと、手がカタカタと震えていた。カウルの影にかくれ、今はフェンの姿が見えないことに安堵する。


「ってぇーな! 何すんだよ」

「それはこっちのセリフだ! 勝手に処罰するなんて許されないぞ。一体どう言うつもりだ」

「勝手に処遇を変えた奴に言われたくないね」

「それにはちゃんと理由があっただろう。リアの様子が一変した。そして本人から別人と証言があった。
だから彼女の“中身”が何者なのか判断がつくまで、処罰は保留となった。話し合ったじゃないか。
フェンだって、リアが以前と違うことは感じているはずだ」

「お情けばかりかけるお前も、なんの疑問も持たずにすぐに靡く城の者たちもうんざりだ!
何が話し合いだ。会合でカウルがあまりにも頭を下げるから、みんな仕方なしにに承諾しただけだろう!」


二人はにらみ合った。
わたしはハラハラとそれを見守る。


「ゆづかに手出しはさせない」

カウルが手を赤く光らせて、先ほどのフェンのように何かを取り出すような構えをした。
カウルも、手から剣をだせるのだろうか。

二人は暫く睨みあっていたが、フェンは舌打ちをすると力を抜いた。


「そんな女に肩入れしやがって」


フェンは忌々しそうに吐き捨てた。

腕を一振りすると、剣が一瞬にしてシュッと消える。
フェンはそのまま踵を返すと、何も言わずに歩いて行ってしまった。
カウルはその背中を黙って見送っていたが、姿が見えなくなると、ほうっと息をつき力を抜いた。