「ゴホッゴホッゴホッ……ふ、フェン……」

「フェンさん?! な、何を……」


見張り役が牢屋の中に飛び込んできた。
彼らが持っていた灯りで、フェンの顔が浮かび上がる。
わたしを見下ろす目は何の色も灯していなかった。冷たい視線は落ちているゴミを見るようだ。


「うるせぇって、誰も動かないなら俺がやる。早く始末しまったほうが城も平和なんだよ」


フェンは右手をボウッと青白く光らせると、手のひらから腕より長い剣を取り出した。


「ひっ?!」

な、なに?! 手から剣が出た!!

わたしはあまりの光景に目を見張る。

銀色の剣身は、持ち手の所が細く、剣先の方に向かって次第に太くなりわん曲していた。
海賊の持ってるみたいだ。
炎を映し、オレンジの光を反射する。


「改心したんだか気が狂ったんだかしんないけどさ、このノーティ・ワンの為に役に立ちたいって言うんなら、死んでくんない?」


可愛らしい顔がニヤリと歪んだ。
フェンはわたしの顎をつかみ口を塞ぐと、剣先を下に向けて持ち直した。


「まぁ俺も非道じゃないからさ、苦しまないように一瞬であの世に送ってやるよ」


自分を狙う剣先が目の前に迫る。
ガタガタと体が震え、全身から汗が噴き出した。


それ、悪役のセリフだからーーーーっっ!!


もう、一回死んでるんです。
なんなら最初、ここがあの世だと思ってたくらいで。


「んんーーーー!!」


わたしは力いっぱいもがいた。

フェンがわたしの喉元に向かって振り下ろそうとしたとき、「やめろ!!」という叫び声とともに、フェンの体はベッドの下へふっ飛んだ。