その晩、眠っているとボソボソと牢の外から声が聞こえた。
石で出来た地下牢は小さな声でも響く。


「ーーーーさん……」

「どうされたんですか?」

「煩いな。お前らに関係ないだろ。さっさと鍵を開けろよ」

「は、はいっ」

見張り役の警備隊と、誰かが話をしている。
煩いなぁとモゾモゾと寝返りを打って、鉄格子に背を向けた。

するとガラガラガラっと背中で音が鳴る。
開いたのはわたしがいる場所の格子だった。

眠い目を擦りうっすらと瞼を開いたが、この部屋には灯りもないため真っ暗で何も見えない。
牢屋の外にある炎の揺らめきが、ゆらりと人影を浮かび上がらせた。


「だれ……」

何かあったのかと思い起き上がろうとしたら、首をがっと掴まれてベッドに逆戻りした。

「っあ……!」


掴まれた瞬間、喉こらぐえっと嗚咽がもれる。
意識は一気に覚醒し、心臓がドクドクと音を立てた。

何?!


「暴れんなよクソ女」


掛けられた低い声に、聞き覚えがあった。

ーーーーフェン!!


「んんんん!!」


身長にだって殆ど変わらない。腕だって、わたしと大して差はない。なのに、引き離そうとしてもびくともしない。
手と足をバタバタさせるが、お腹の上に乗っていたフェンに、さらに押さえつけられてしまった。

首を絞められ息苦しい。
フェンの手を叩きガリッと引っ掻いたが、彼は鬱陶しそうに眉を動かしただけだった。


「ったく、総長であるカウルがなまっちょろいことしてるから……こんな女早く処分しちまえばいいんだ」

首を絞める力が緩められる。
途端に取り込めるようになった酸素に、喉がヒューと鳴り、次に吐きそうなほど噎せた。