「まぁ、そうだよなぁ」
「また騙されるところだった」
「高貴なお姫様は、俺達が簡単に靡くから心の底でせせら笑っているんだろうよ」
久しぶりの賑やかな雰囲気の食堂に、正直に戸惑いを表せられなかった者たちも、ゆっくりとスプーンをおく。
喜んで食べていた者も気まずそうにし、食べるのをやめてしまった。
「あ……」
ゆづかの眉毛が下がった。
「先代の遺言で、カウルが強く出れないのを良いことに取り入って、次は子供たちでも味方に付ける気でいたか?」
「違うよ、そんなつもりは……ただわたしは美味しいご飯を作って、それをみんなに楽しんで貰いたかっただけで」
泣くかと思ったゆづかは、唇をきゅっと引き結ぶとしっかりと答えた。
「少しずつでも信頼を得られるように、今、出来ることを一生懸命してるだけだよ」
「それが媚びてるっていうんだ! 処罰が決まってから改心したように見せたって遅いんだよっ本当に忌々しいやつだ……!!」
フェンは一見、線も細く見た目も中性的なため、可愛らしく見えるが、誰よりも男らしい性格だ。
体力と筋力は平均より少し上程度だが、魔力だけなら恐らくノーティ・ワンNo.1となる。
怒りと共にぶわっと噴出した魔力が、周囲の空気をビリビリと震わせた。
これには女性子供は勿論、警備隊の連中も震えあがる。
ゆづかもきっと恐れたに違いない。
「っこんなもの……!!」
フォローしなくてはと思った時、フェンはテーブルに乗っていた器を数人分、なぎ倒しながら腕で払った。
俺のは食べ終わっていたからスープが少量飛んだだけであったが、正面のラジのは少しまだ残っていたし、フェンのものは手をつけていなかった為、中身が飛び散った。