「美味いな」

声をかけると「まぁ不味くはない」と素直ではない返答がきた。
麺、という食べ物らしい。初めて食べた味と食感に、なんともいえない喜びが込み上げた。

しかし周りを見渡すと、素直に喜んでいるのは一部だった。半数以上は複雑そうな顔で食べている。
まぁ、まだ仕方が無い。そう簡単に信用など出来ないだろう。


このまま、裏切ってくれるなよ。

これ以上何かしでかしたら今度こそ庇えない。頼むから改心して欲しい。

国を良くしたい。
そして、出来れば先代の忘れ形見である彼女を処罰などしたくない。
彼女がここまで我が儘にのさばって来たのは、優しすぎる自分のせいだとラジとフェンには何度も怒られていたからだ。


リアを眺めていると、がしゃーーん! とテーブルが鳴り揺れる。周囲の器やコップが揺れ、スープが零れた。

不穏な音に、ガヤガヤとしていた食堂は一瞬にしてシンとした。

音の主はフェンだった。
テーブルを拳で叩いたフェンは、ギリギリと奥歯を噛み叫んだ。


「やってやれっか!!」

「フェン、落ち着け……」

手を差し出すが、振り払われる。

「たかが1食作ったくらいで、罪滅ぼしになるとおもうなよ! リアのやって来たことは重罪!! みんな、こんなやつの飯を食うなんてどうかしてる!!」

フェンは一口も食べていなかった。

吐き出した憎悪に、その場にいた半分以上が顔を見合わせながら同意をした。