今日も定時である17時30分きっかりに仕事を終え、31分にはタイムカードを押し退社をした。

会社から車で15分の自宅に帰る。

夏は畳にアリの行列が見れるし、真冬は風呂場でヒートショックを起こしそうなほど外気との差がなくなるという、すきま風バンザイな家であるが、わたしにとって大切な城であった。

八畳の居間にはお気に入りの円卓と座椅子。手の届く位置に料理本を詰め込んだ木製のマガジンラックがある。リモコンもそこに仕舞えるようになっていてお気に入りだ。

肘置きにも枕にもなる、サッカーボール三つ分くらいの小型のビーズクッションを脇においてある。それを枕に気ままに寝転び、テレビや雑誌に夢中になっていると知らないうちに寝てしまうことが度々あった。

ふすまで仕切られた隣の四畳半の部屋には、母親のお嫁入り道具だったという古めかしい桐のタンスが、約一畳分占領していた。

直滑降にもってこい、スキー上級コースほどの角度がある階段を上がった先には、物置と化してしまった六帖の部屋がある。

タンスの横に鞄を放り投げると、直ぐにジャージに着替え、踏み割ってしまいそうな縁側からそっと庭にでた。

ジャージは高校の時から愛用している、名字の刺繍入りだ。さして運動を積極的にしてこなかった為、ウエストのゴムだけ入れ替えればまだまだ着用できるだろう。膝が擦り切れそうなのが気になるから、今度当て布でもしようかと思っているところだ。