「まぁ見ててくださいよ」


大量にふかしておいたジャガイモを蒸し器からとりだすと、大きなボウルの中ですり潰す。
城には300人ほどが暮らしているので、大人数だから大変だ。
さすがに一人で全員分は作れないので、みなさんに手伝ってもらうことになった。


「こんな感じで、滑らかにすり潰したら塩を少し、それから小麦粉を混ぜて捏ねてください」

少しずつ小麦粉を混ぜながらやり方を見せる。
本当は重曹とかあると、茹でた時にのびにくくなっていいんだけど。


「ふん、なんで俺がワガママ姫の言うことを聞かないといけないんだ」


彼らが手伝うことになったのは、カウルがみんなに頼んでくれたからだ。文句を言いながらも手伝ってくれる。


「すみません、お願いします」


控えめにお願いすると、見張っていたカウルと目が合った。瞬きをするとカウルはふっと表情を和らげた。
かたぶつそうな顔が優しい雰囲気になる。ちょっとどきっとして、わたしはまた瞬きをした。


「……これは何をつくってるの?」


若い女の子が恐る恐る話しかけきた。

そう言えばいつも一人で作っていたから、過程を誰かに見られるのは初めてだ。
ニヤニヤ動画の「作ってみた」で録画した過程を動画で流した事はあったが、リアルタイムっていうのはなかった。


「まだ内緒。絶対美味しいの作るから、楽しみにしててね」

嬉しくなってふふふと笑うと、女の子は驚いて目を丸くする。そして慌てて顔をそらした。