声にならない悲鳴をあげ、逃げ場もなくその場でちぢこまると、「やめろ!」と鋭い声とともに王子様のマント……じゃなくて総長の特攻服に包まれた。

わたしの2倍近くあるたくましい腕が、わたしの体を引き寄せる。
リアは細いからカウルの中にすっぽりとおさまった。堅い胸板に顔がぶつかる。

「へっ」

男に抱き締められるのは、人生初である。


「カウル! またリアの味方をするのか!」


フェンがわたしを引き離そうと、腕を引っ張った。


「こいつの言い分を聞いていないだろ。聞く前に力でねじ伏せるのはよくない。みんなも落ち着いてくれ」

「何を今更。散々俺達の温情をコケにしてきたのはリアだろう!」

「こいつは以前のリアとは違うだろ?」

「はぁ? 何を言い出しているんだ。気でも狂ったか。それともリアに魔力で術でもかけられたか」

「ちがう。たとえリアだとしても、この二週間の働きは認めてやるべきじゃないのか」



「総長、なにをおっしゃるのです。端正込めてやっと収穫した野菜を灰にし、畑を使えなくし、河口の流れを変え海の幸を途絶えさせた女が、ほんの少し働いただけで許されると思ったら大間違いです! さらにはやっと少ない材料で作った食事にケチをつけたのですよ?!」

料理係の女の人が叫んだ。
みんなの、カウルを見る目までもが憎悪に染まっていた。