「ーーーーなんだと?! 料理長が作った食事に文句があるというのか!」

見張り役の男が怒鳴ると、それを聞いた周囲の人たちもいっせいに非難を始めた。



「なんて図々しい」

「やっぱりリア姫はわがままだわ」

「文句があるなら食べるな! 食わしてやるだけでもありがたいと思え!!」


料理係が調理器具を持ったまま次々と出てきて、わたしを取り囲んだ。

おたまにフライ返し。
うん。可愛らしい。
フライパンに包丁。包丁はやめようか。今にも刺されそうだ。卵を持ったそこの君。それは生卵かな? 投げちゃ駄目だぞ。貴重な食料だ。


「いや、誤解……」


ジリジリと包囲網が狭まる中、わたしは顔を引き攣らせた。
違うんです。ごめんなさい。口が滑りました。


「何をやっている!」


叫んだのはカウルだった。
ちょうど警備隊が朝の訓練から戻ってくる時間であった。

わたしと警備隊を繋ぐ直線が、ざあっと人が避け道ができる。
カウルを先頭に、ラジとフェン、さらにその後ろへ何人も従えて食堂へ入ってきた。


「何を揉めているんだ」

「リアがなんかしたんだろ」

二週間たってもフェンは、わたしをゆづかだと認めてくれない。顔を合わせればフェンの気が済むまで罵倒されるだけだ。
反対にラジは静かに怒るタイプらしく、親のかたきのようにわたしを睨んだ。

「リア姫が俺達の食事をバカにしたんだ!」

料理係のこどもが母親の影から叫んだ。

「あぁ?」

ラジの目が据わった。
ひぃっ、こ、怖い。
普段比較的静かなタイプだから一言が重い。凄い迫力だ。

「はあん?」と言いながら顔をちかづけてくる。これが不良界のメンチを切るってやつですか。