手当が終わると食堂に案内され、食事をだしてくれた。ふかしたジャガイモだ。顔にかかるほど立ちのぼる湯気に、祭りで食べたジャガバターを思い出す。

皮付きのジャガイモはほくほくとし、柔らかい舌触りと微かな甘み、そしてバターの塩っ気が染みて、家で食べるより何倍も美味しく感じた。


出された物は味付けも何もない、質素なものだった。
中くらいのものがふたつほど。

普段のわたしであったら二つも食べないだろう。しかし極限まで飢餓を感じていたわたしは、むさぼりついた。

熱々の芋が口の中でとろける。すこしでも栄養を取ろうと、皮も食べた。
いつもなら直ぐに水分が欲しくなるのに、今日はそれどころではなく喉に流し込んだ。

なんだか懐かしい味だ。
のり塩やマヨバター、塩辛もなかなか美味しいよね。たこ焼き器で蒸して、アヒージョのように一口ずつ味が違ったら楽しいし写真映えしそうだ。

ああ、生きているうちにインスタグリムにアップできてたら、たくさん評価もらえたかな。

食堂の料理人や給仕係らしき人たちは、何か言いたそうに顔をしかめ、必死に食べるわたしをじっと見つめていた。


「ああ、美味しかった。ごちそうさまでした」


パンと両手を併せて頭を下げる。
凝った味付けばかりではなく、たまには素材の味をそのまま楽しむのもいい。

食べおわったお皿を持ちいそいそと立ち上がると、周囲の人たちがあり得ない、といった視線を向けてきた。