カウルに腕を引かれ、連れられた部屋は草刈りの後や草原が雨に濡れた後のような、青臭い葉の匂いがした。
木製のベッドがいくつも並ぶ。
男の人と女の人がいたが、わたしを見ると顔を引き攣らせ、カウルに頭を下げるとそそくさと部屋をでてしまった。


「あの、ここは」

「医務室だ」


下着もズボンもちゃんとあったらしい。別の使いの女性が持ってきてくれた服を急いで纏うと、カウルは着物の羽織のようなものだけ着方を教えてくれた。

どうやらシャツのようなインナーを中に着て、着物は軽くはおりズボンとともに帯でとめるらしかった。
カウルはわたしの帯を少し顔を逸らしぎみで締めると、お風呂上がりは嫌がらせで服を隠されてしまったのだろうと言った。

次に、木箱を重ねたような棚から何種類かの葉を取り出すと、すり鉢のようなものでゴリゴリと潰して傷口に塗ってくれた。

独特な草の匂いは薬だったのか。


「あの、カウルは偉いのに色々してくれるんだね」


こういうのは部下とか、召使いみたいな下の人にやらせるのではないのか。

「他の者にやらせたら、嫌がらせで済むなら良い方で、命を狙われ兼ねないからな。リア姫の世話をしたいなどと思う者は城にはいないし、仕方ないだろう」

「……リアってそんなに嫌な奴だったの? 名誉挽回するの大変そうだ……」

肩を竦めると、新しい葉をゴリゴリとつぶしていたカウルが顔を上げる。

「本当にリアじゃないのか」