風呂場には大きな鏡があった。改めて自身を確認すると、リアと呼ばれる娘はたいそう美人であった。10代かなぁ? と首を傾げる。
美しい金髪。透き通るような肌。所々黄色に光るブルーの瞳は小宇宙のように輝いていた。
前代、ようするに少し前まで一番偉かった人の娘、そしてこの容姿となれば調子にのってしまったのも頷ける。
お風呂を出ると、タオルらしい布と新しい着替えが置いてあった。日本と違ってゴワゴワしたタオルだが、それしかないのでそれで体を拭いた。
着物っぽい服をぴらっと広げるが、着方がわからない。
監視役として脱衣所に控えていた女の人数人に、「あのぅ、これどうやって着れば……」と声をかけてみたが、ギロッと睨まれ無視をされた。
仕方がないので、とりあえずそれを羽織ってみる。浴衣の帯のようなものがあるが、わけがわからない。
素知らぬふりをして立っている人たちは、緩やかなズボンを履いていた。わたしにはないのか? そして下着もないのかな。羽織が膝丈ほどあるからこれだけなのかも。
疑問だらけであったが、わたしがここを出ないと彼女達の仕事が終わらない。
とりあえず帯を抱え「あ、ありがとうございました~……」と首をすぼめながら脱衣所を出た。
出入り口の両端には警備兵が二人。わたしを見ると慌てて視線を逸らす。
みんなしてひどいじゃないか。
悪女も心が入れ替わったんだぞ。っていうか中身入れ替わってるから助けて欲しい。
その先にカウルが腕を組んで待っていた。唯一の味方!
「カウル、あの、お風呂ありがとう……」
まさか待っていてくれていたとは思わず、喜びながら駆け寄ると、カウルは目をひんむいて顔を赤くした。
「……なんて格好をしているんだ!!」
「え? ご、ごめんなさい着方がわからなくて」
「下着とズボンはどうした!」
「え、わたしのズボンもあるの?」
ポカンとしていると、頭を抱えたカウルに「ちょっと来い!」と腕を引っ張られた。強く掴まれ、縄で擦り切れたところが痛んだ。