飛び込んできたのはラジだ。
いつも飄々としているタイプなのに、珍しく慌てていた。
今日のラジは、畑の担当だったはずだ。まだ土まみれ、かなり急いだらしく汗だくであった。
小さなトラブルでは、ここまで慌てる筈がない。
デリクリエンツの襲撃か。
「どうした?! 抗争か?!」
もしや、ゆづかに関して何かーーーー……

「いや、違うっ……畑が大変なんだ!」
「荒らされていたのか?!」
「違うんだよ。でもとにかく大変なんだ! 見た方が早い。とにかく畑に来てくれ!!」

獣か、嫌がらせか? せっかく収穫の軌道に乗ってきたというのに!
書類を投げ出して畑に急いだ。


「な、んだこれは……」

バイクを走らせ急いで畑に行く。
目の前に広がる光景に、口をあんぐりと開けるしかなかった。

「な。すげぇことになってるだろ?」

ラジは困惑している。
一緒に畑仕事だった者たちはこの光景に慣れたのか、皆が畑に入りワイワイと盛り上がっていた。

「どう思う?」

どう思うと言われても……どう対応していいかわからず立ち尽くす。フェンも言葉を無くして瞬きを繰り返すばかりだ。

「総長、すごいっすよ! なんか、大収穫っす!」
「このトマト持ってみてくださいよ。ちょー重いんすよ」

大人のお尻ほどあるトマトを差し出された。想像以上の重さが腕にズシンとのし掛かる。落としそうになって、慌てて力を入れた。