「この状況でどう笑えっていうんだ」

「焦っても仕方ないって」

「焦るだろ! もう一ヶ月だ。ゆづかは毎日泣いているかもしれないんだぞ」

「リアがデリクリエンツの男と通じてるかもって分かったときも、そんな顔しなかったくせに」

フェンは呆れを含んでぼそっと言ったが、しっかりと聞こえた。
気持ちを制御出来ていない自覚はある。
だって、ゆづかだぞ。リアではない。この世界のことに関しては無知だ。

「ゆづかは、リアとは違う。世間知らずじゃないか。この国のことさえまだ良くわかっていないのに、デリクリエンツだぞ。寂しく、辛い日々に違いない」

「そうか? ゆづかなら、リアより世渡り上手いんじゃないの。今のところ姫が捉えられてっていう悪い報告はまだ届いていないし、けっこう大丈夫なんじゃん?」

「だからこそだ! あの美貌に天真爛漫な性格が加わったんだぞ。クランクに手を出されたらどうする! 早く助けるんだ。俺が、守ってやらなくてはと……なんだその顔は。俺はただ心配を……!」

「あーはいはい。ゆづかになってから溺愛だもんなぁ」

フェンのうんざりとした顔に口を噤んだ。

「ち、違うぞ。俺は一国のトップとして……」

しどろもどろに反論しようとしたとき、部屋の扉が勢いよく開いた。

「――――――カウル!!」