みんなが息を合わせ、一斉に飛びかかろうする寸前に、クランクが高笑いをした。

「揃いも揃って、間抜けなやつらだ」

クランクは腕を大きく振った。
途端に、クランクを中心に甘い香りがぶわっと広がった。
それは目や鼻に強烈な刺激となる。


「うわっ」

「これはっ……!!」

みんなはとっさに顔を布で覆った。


「うっ……」

匂いの中心にいたわたしは、グワンと目が回る。
甘い香りは、体を痺れさせ思考を止めた。
膝がガクッと折れる。立っていることもままならない。瞬きをしたら…そのまますぐにでも気を失いましたそうだった。
視界の端に、泣きそうなライトが映る。
違うんだ。君のせいじゃない。
自分がついて行っていればとか、余分なことは考えなくていいんだぞ。



「っっゆづかっ!! くそっ! ゆづかーー!!」

匂いの靄に阻まれて、カウルの声が遠くなった。



「じゃあな、姫だかゆづかだか知らないけれど、美味そうな女はいただいていくぜ」

ーーーー食べるの?!

デリクリエンツは人を食べる人種なのか。
ああ、料理家最後の人生で自分が食われるなんてーーーー……

そこで記憶が途切れた。