まあ、それはともかくとして、なんなの? と弥生子に追求されたので、咲子は、昨夜から気になっていたことを口に出してみた。

「あの、実は私……、人の心にちょっと敏感なのですけれど」

 そんな言い方をしてみる。

 弥生子は質問しておいて、聞いているのかいないのか、黙々と牛繊肉(ぎゅうフィレにく)を食べていた。

「敏感すぎて、ときに困ることがあって。
 どうして、こんな風になったのかなと、最近思うんですよね」

「あら、なにそれ」
とそこでようやく弥生子は顔を上げた。

「私のせいで、敏感になったって言うの?」

「……いや、言ってないじゃないですか、そんなこと」

「こんな困った継母が来たから、いつもビクビク気を使って。
 人の感情に敏感になったって言うんじゃないの?」

 とんでもございません。

 ……万が一、そんなこと思っていたとしても。

 いや、思っていたとしたら、なおさら、あなた様には申しません。

 より恐ろしい目に遭うのに、と咲子は思っていた。