その夜、咲子は、ふと思った。
そういえば、何故、私には心の声が聞こえるようになったのでしょう。
赤子のころからではなかった気がするのですが……。
翌日、弥生子とともに、買い物に行ったり、食事に行ったり
したのだが。
食事の最中もそのことを考えて、渋い顔をしてしまっていたらしい。
弥生子に言われた。
「なんなの?
あなたのそんな顔見てると、食事がまずくなってくるんだけど」
……相変わらず、 はっきり言う人だ、と咲子は思う。
だが、こんな風に罵られても、どのみち嫁ぎ先でも、常に夫にぶった斬られているので平気なのだが。
でも、そんなことを、うっかり、この義母に言おうものなら、
「まあ、なんてことっ。
あなたが嫁ぎ先で大事にされないなんて。
うちの恥だから帰ってきなさいっ」
と言うに違いない。