ようしっ。
 莫迦嫁なりに、なにか頑張ってみようっ。

 行正さんの心遣いに応えなければ、と咲子は張り切る。

 そうだ。
 お料理教室に通ってみるとか、どうだろう?

 自分で食事を作ることなんて、まずないし。

 そんなことしたら、雇っている料理人に悪い気がするけど。

 教養として必要だというので、女学校でも少し習ったし。

 女学校の先輩たちから、自宅でシェフを招いて、西洋料理の教室を開いているから、一緒にどう? と誘われたこともある。

 よしっ。
 文子さんたちを誘って行ってみようっ。

 そんなことを考えていたら、なにかすごく楽しくなってきて、咲子は笑顔で行正を見送れた。

 すると、行正も笑う、までは行かないが、いつもより穏やかな顔で出かけていった。