お飾りの妻より関係性が深くなるだろう使用人たちをまず選定しなければ、と思っていた行正だったが。

 咲子と会ってからは、

 ……使用人も屋敷で一緒に暮らすのか、とちょっと憂鬱になっていた。

 新婚なのに、二人きりではないのか。

 いらないくないか? 使用人。

 使用人を雇いたくないという話を咲子のばあやにすると、ばあやは笑い出した。

「あらあら、まあ、そうですね。
 三条様がご用意してくださったほどのお屋敷。

 若い人たちだけの住まいと言っても、住み込みの使用人は必要ですよ」

 咲子とふたりきりで暮らしたい自分の心を読まれている気がして、ちょっと恥ずかしかったが。

 あたたかみのある感じのいいばあやだった。

 さすが我が妻を育てたばあや、と行正は、ばあやを密かに尊敬していた。