三条の跡継ぎである自分が結婚しないとかありえないし。

 相手もどうせ選べない。

 じゃあ、なんでもいいか。

 そう思っていた。

 世間体のために、妻という存在があれば、それでいいだけだから。

 叔父が言っていた。

 広い屋敷の中、妻と顔を合わせることはあまりなく。

 女中や下男ばかりと顔を合わせている、と。

 では、日常生活をストレスなく送るうえで、大切なのは、妻ではなく、女中や下男だな。

 そう行正は思っていた。

 ――使用人たちは厳選しなければな。

 三条家の使用人たちはみな、申し分ない者たちだ。

 使用人たちは横のつながりがあるという。

 彼らに口をきいてもらって、これと思う人物を紹介してもらおう、などと算段しながら見合いの席に臨んだ。

 妻となる女が現れた。

 一目で気に入った。