次の日の朝、屋敷ではちょっとした騒ぎが起こっていた。

 清六が昨日、他の仕事先で脚立から落ちて、足を痛めたというのだ。

 しばらく来られないから、代わりの者を寄越すという。

「ほう。
 どんなご老人が来るのだろうな」
と朝食の席で呟く行正に、

 何故、老人限定と咲子は思っていた。

 年若い女中のユキ子が、
「清六さんの兄弟子の方が来られるそうですよ」
とちょっと浮かれたように言う。

「私、三条のお屋敷にいたとき、拝見したことがありま……」

 そうユキ子が言い終わらないうちに、行正が言った。

「別にいいんじゃないか?
 清六が戻るまで、このままで」

 えっ? と咲子とユキ子と年配の女中、ハツが訊き返す。