「そういうわけじゃないんだ。ただ、なんでも人がやれないようなことをやってみたくてね」

「ふーん、頭いいのは間違いないよね」

「さっきバカだっていってたくせに」

「だって馬鹿と天才は紙一重っていうじゃん。っていうか、しおんくんはそこ、オーバーラップしてるよね」

「はい、お褒めいただいて嬉しいったらありゃしないです」

「どっちかっていったらけなしてるつもりなんですけど?」

 ふたりは何気なくおしゃべりをしながら日の出を待つ。そこであかねはしおんにどうしても聞きたいことがあったのでそれを切り出す。

「ねぇ、どうしてあたしのことなんか……」

 するとすぐさまさえぎられる。あたかもしおんはあかねがそういいだすと予想していたかのように。

「どうしてって、どうしてそう聞くの」

「だってあたし、美人じゃないし、これといった取柄ないし、友達と比べても地味だし」

「そうか、じゃあ俺と一緒だね」

 あかねはその的外れとも思える反応にむっとする。

「そんなわけないでしょ、しおんくんはイケメンだし、頭いいし、友達はいないみたいだけど……あたしとまったく逆じゃん」