「もうこんな怖い思い、やめてよねっ!」



 まもなく雲取山の頂が見えてきた。雲の海原の中、そこだけがぽっかりと顔を出している。

「ここだよ、目標地点は」

 そしてしおんはブランコプターの速度を徐々に下げ、雪山の頂に降り立った。ぽすんと深い雪に埋もれたから、衝撃はほとんどなかった。あかねはふーっと深い安堵のため息をつく。

 東の空に目をやるとだいぶ明るくなっていて、いよいよ稜線が輝きだしていた。どうやら日の出に間にあったらしい。

「しばらくここで見ていよう。今までと違って、相当呑気に日の出を味わえるからね」

「うん、今や地球はのんびり屋さんだもんね」

 なるべく悲観的な空気にならないようにあかねはそういう。それからあたりを見回すと、雲取山の頂にはいくつもの石碑が置かれているのに気づいた。ここに登りつめたものが記念に残していったのだろう。

 一番高い、屹立した石碑には「雲取山 標高 二千十七メートル」と書かれていた。東京なのにこんなに高い山があるんだなぁと感心する。

「しおんくんって、危ないことが好きなの?」