悪戯っぽい声でそう答えたしおんは、あかねの乱れた髪をそっと撫でる。

「ほら、最高のつり橋効果だと思わない?」

「しおんくんのバカッ!! 心臓が止まると思ったじゃない」

 そういってあかねは思わずブランコプターの上に立ち乗りし、しおんに密着するとポカポカとしおんの頭を叩く。怒りとドキドキで恐怖が吹き飛んだ。

「こっちに乗り込んできたんだから覚悟しなさい!」

「いて、いてて、バカになっちゃうじゃん、やめてよ」

 あかねの目のすぐ上にあるしおんの顔は、痛いんだか嬉しいんだかわからない表情になった。

「あんたはすこしくらいバカになったほうがいいのよ、っていうかもうじゅうぶんバカだわっ! 落ちたらお母さんが泣くじゃない」

 するとしおんはポカポカを避けるように身を逸らしながら訊き返す。

「じゃあ、きみは泣いてくれるかい」

「うっ……」

「よしっ、俺の人生の目標は決まった。俺が死んだらきみに泣いてもらうことだ」

 にひひと白い歯を見せて笑うしおん。

「死んだらあたしが泣いたかどうか、わかりっこないじゃん」

 対照的に涙目のあかね。