「あっ、あっ、やっぱりちょっと怖い……。前置きしてよね」
「じゃあ雲の中に突入するよ」
あかねが文句を言ったか言わないかのうちに、しおんの姿はすぽっと頭上にあった雲の中へと消えた。
「ちょ、ちょっとどこよ、しおんくん!」
あかねもしおんの操縦により、雲の真っ只中へと引き込まれてゆく。
視界が雲でさえぎられ、頬に触れる空気はしっとりした柔らかみを帯びている。怖くて寒いのに心地よい感触。天国に昇華するときってこんな感じなのかなと勝手な想像を膨らます。
しばらくすると突然ぱっと目の前が明るくなった。
「わぁ……」
つい感嘆の声がもれる。頭上が一面、淡いブルーのモノトーンで覆われていて、ぽっかりとひとり、浮いているみたいだった。
足元を見下ろすとそこはどこまでも続く雲海で、ついその上に飛び乗ってしまいそうになるくらい、くっきりとした純白の世界だった。
その壮大な光景に見とれていたけれど、しおんの姿が見えないのに気づいてふと、我に返る。
「しおんくん、どこ、どこなの?」