雪の帽子をかぶったビルで埋め尽くされた街はしだいに住宅街へと姿を変え、そして家屋もしだいにまばらになってきた。

 それから樹氷が目立つようになり、純白に覆われたなだらかな山稜に差しかかる。標高が徐々に高くなり、地面が雲の中に吸い込まれていく。そのあたりの地上はほとんど樹氷で覆われていた。

 かつて植樹された杉の森なのだろう。今となっては林業を営む人も減って、杉の森は花粉症の原因となるただの迷惑でしかない。

 けれども冷たい雪に耐えながら太陽がまたやってくることを、この木々は信じているのかな、と思い、愛しさがこみ上げる。

 その森の中に、凍りついた清流が通っていて、その上流に大きな湖が見えてきた。淡く光る氷の水面は魔法がかけられたように神秘的。

「ここ、なんていうところなの、綺麗」

「奥多摩湖だよ、東京に住んでいるのに知らなかったんだね」

「氷が溶けたら綺麗な水が流れてきそうよね」

「そうだね、あと数日したら雪解け水が流れ出すだろうね」

 なんでこんなに綺麗な世界がなくならなくちゃいけないのかしら。そう思っていると、しおんはブランコプターの高度をさらに上げていった。