あかねにとって、朝日には特別な思い入れがあったのだ――。



「ねえ、なんでパパはあたしにあかねっていう名前をつけたの?」

 幼き日のあかねは、父の肩の上から顔をのぞき込み、そう尋ねる。

「それはね、お日様が一番優しくなる時間、空があかね色になるからだよ。
 お日様はは自分がいなくなると闇が訪れてくるんだって知っているから、地上のみんなが不安にならないように、いつもよりずっと大きく輝いて、空を優しい色に染め上げるんだ。
 それからゆっくりとそのオレンジの明かりを消していって、かわりに金色の一番星や銀色の月を空の上に並べてくれるんだ。
 ほら、そうすれば夜が怖くないだろう?」

「でも何でお日様は沈んじゃうの?」

「それはね、火照った地球を休ませてあげるためだよ。ずっとお日様が照らし続けていたら地上は焼け焦げてしまう。けれども次にお日様が顔をだすときは、ちゃんと希望を連れてきてくれるんだ。新しい一日の始まりだってね」

「ふーん、そういうことなんだ」

「だからあかね色は優しさの証。それから朝日は希望の証なんだよ。世界は毎日、優しいお別れと眩しい希望を見せてくれるんだ」