「一号機、二号機、スタンバイオーケー、カウントダウンスタート!」

 そういうとプロペラがブルルンと鈍い音を立てて回転し始めた。頭上から冷たい風が物凄い勢いで足下に抜けていく。

「十、九、八……」

「ねぇ、そもそもカウントダウンって必要なの?」

 そう突っ込むと「気分だよ、気分」としおんは笑う。

 あっ、そう気分なのねと心の中で思いつつゼロになるのを待っていると、しおんは「五・四・三」まできたところでいきなり「ゴー!!」と叫んだ。

 その瞬間、体が宙に放り投げられるように、ぶわんと空に舞い上がった。

「ひゃ、ひゃ、ひゃああああっ!」

 掌に力を込めてブランコプターのチェーンにしがみつく。勢い余ってブランコプターは空中で回転して、空に浮かぶ雲と逆さまになった地面が二度、目の前を通り過ぎていった。

「ああああああ、落ちるうううう!!!」

 体を硬直させて滑り落ちないようにすると、空中で何度も派手にスイングしていたブランコプターは徐々に落ち着きを取り戻し小さな揺れに収まった。

「はぁはぁ、助かった、もうお腹いっぱい、早く降りたい、しおんくん……」