「もうすぐ死んじまうってことになってるんだから、死んだつもりで挑戦してみてくれないか?
 俺とふたり、雲の上のデート」

「えっ、えっ、まさかこれで雲の上まで行くつもりなの?」

「大丈夫、俺はしょっちゅうこれで出かけているんだ。ただ雲の上は……まだかな」

 一瞬、間があったから不安が湧き起こる。

「うわっ、なんかなおさら怖くなってきた」

 たじろぎ二三歩、後ずさりするあかね。

「ささっ、善は急げだ。それじゃあさっそく乗り込んで」

 というと、しおんはあかねの肩を持ち、「よっこらしょっ」といってそのブランコの上にあかねを座らせる。それから自分のリュックの中に手を突っ込み、あるものを取り出した。

 イヤホンとマイクがいったい化したレシーバー。両耳用だ。

「空の上ではこれがないとプロペラの騒音で話ができない。俺のスマートウオッチでナビゲートするから、あかねは操作はいらない。俺に万一のことがあったら別だけど。だからあかねもスマートウオッチを付け忘れないようにね」

「使い方がまだわからないんだけど」

「大丈夫、わからなかったら俺に聞いてくれ」