嘘ではないフォローをすると、お母さんは「誰に似たのかしらねぇ、ほんと不思議よね」といってはにかんだ。その笑顔はとても上品で、この世の終わりを憂いている様子なんてこれっぽっちもなかった。ほんとうはそんなことないはずなのに。

「だけど、友達を連れてきたことははじめてなのよ。それがこんなに可愛い女の子なんてね」

 しおんをからかうようにそういって顎に人指し指を当てる。

「母さん、俺のことはいいからほっといてくれ」といいながらリュックにガサゴソと荷物を詰めている。どうやらこれから出かけるための準備みたいだ。

「しおんくん、どこへ行くつもりなの?」

「え? 『空』だけど」

「空??」

「ごめんなさいね。しおんの好きなことに付きあわせちゃって」

「へっ、なんのことですか?」

 いまいち話が飲み込めないでいると、しおんは荷造りを終え、すっくと立ち上がった。それから玄関の扉をばっと開け放ち、雪が敷かれた庭に踏み出した。

「あっ、ちょ、ちょっと待ってよ」