「一時限くらい関係ないよ。どうせ人生は長いんだ!」

 振り向いてウインクをして、あかねの腕をぎゅっと引き寄せる。
 
 クラスメートの冷やかし視線と野次の直撃を受けながら休み時間の喧騒が満たす教室からエスケープする。
 
 目に入るのはいつもの廊下、いつもの階段、そしていつもの背中。
 
「空はまだ見るなよ、あかね」

「わかったわよ、もうっ、勝手なんだから!」
 
 しかたないので校庭に出てからは足元だけを見て走る。息つく暇もなく誓いの鐘に着いた。するとしおんは手を引き壇上にあかねを連れ、そこで「空を見上げてごらん」という。

 あかねはいわれるがまま空を仰ぐ。
 
 息が止まり、胸が震えた。

 目にした光景は、もう永遠に見れないと思っていた、群青色のキャンパスにまき散らされた光の粒子。はるか宇宙からのメッセージだ。

 余計な光にじゃまされることのないこの空間は、今はふたりだけのもので、だから星空もせいいっぱい祝福して格別の煌めきを放っていた。

「うわぁ、綺麗だねー」

「俺と見るからでしょ」

「うわっ、また自分でいう? でもその通りだよ」