「ここって……この前、しおんくんと一緒に来たところだよね」

「そうみたいだね。だってここは俺の記憶の中の風景だから」

 しおんは笑って答える。

「けれど不思議だ、なんで俺の記憶の中にきみがいて、記憶の中にないことを話しているんだろう」

 あかねも不思議に思う。

「あれ、おかしいなぁ。ここはあたしの記憶の中でもあるはずなのに」

 でもきっと、今は天国にいるから何でもありなんだとあかねの中では解決する。

 ところがしおんはまた深く考え込んでいる様子だった。しばらくして口を開く。

「……いや、もしかしたらだけど、強い磁場のせいできみと俺の思考が混線しているのかもしれない」

 しおんは深い眼差しをしてあかねの手を取り、雲の上に立ち上がらせる。不安定な足場のせいで転びそうになりしおんの肩に手をかける。しおんは提案する。
 
「じゃあ、試してみたいんだ。ほんとうにそうなのか」

「どうするの?」

「あかね、まずは目を閉じて、そして自分の好きだった風景を思い浮かべてみて。それは俺に言わないこと」

 するとあかねはちょっと考えたあと、ぴんと人差し指を立てる。