そういって東堂に視線を送り、ぱちっとウインクするあかね。

 とたん、会場からどよめきが起きる。心構えはしていたけれど面食らった藤堂ははっと我に返り、驚きを隠すことなく司会を続ける。
 
「なっ、なんということでしょう! 末広 あかねは悪人とされた高槻 しおんにベタボレしていたみたいです! どうやらふたりは恋仲にあったようです!」

 どわっと広がる喧騒に臆することなく、しおんはあかねをそっと抱き寄せ、真顔で耳打ちする。

「きみは生き残りなよ。そしたら俺が、この世から消えても俺はきみの胸の中で生き続けられるんだから」

 その言葉にあかねは胸がきゅっと締め付けられた。
 
 しおんくんはまだ、磁気嵐によって電子機器が機能を失いシェルターが機能しなくなる事実を知らないんだ。捕まっていたからだ。
 
 しおんくんは優しい。

 しおんくんはいつもあたしのことを思ってくれる。

 だからそういうのもすごくよくわかる。だけど、あたしは。どんなに自分に問いかけても。結局は。
 
 ……しおんくんと最後まで一緒にいたい。最後に一緒にいる人はあたしの中では決まっているんだ。