撮影現場はいつもテレビに映っている、屋外に設置されたコロシアム。観客席に囲まれた造りは公開処刑にはもってこいだった。
 
 太陽はいよいよ天高く昇りつめ、五日前は氷点下だったというのに現在の気温は三十度をゆうに超えた。今から三日後には気温は六十度を超え、またこれから起きる天文学史上かつてない高度の磁気嵐で空調機器が機能しなくなるため、日本は灼熱の太陽の下で滅びゆく運命にあった。世界の裏側はすでにそうなっていた。
 
 いや、それ以前に予測不能の磁気嵐が発生する。人体が悪影響を受ける可能性も高そうだ。いずれにせよ世界は終焉が約束されていた。
 
 あかねは願う。
 
 ああ、もうすぐあたしの人生が終わる。世界が終わる。だから最後にしおんくんともう一度だけ……。
 
 会場にはたくさんのカメラが設置され午後六時からの放送だというのに昼過ぎからすでに長蛇の列ができていた。

 同伴した父からはロケの打ち合わせの前に、「あの高槻 しおんはできるだけひどい目にあわせてやるんだ。遠慮はいらないぞ、好きにしろ」といわれ、背中をポンと叩かれた。