楽しかった学園祭も終わり数日が経ちました。

学園祭はこれで終わりじゃない、来年もある。
来年も一緒に遊ぼうぜと言ってくれた柳也さんの言葉が嬉しくて。


いつもの日常に戻っても私はいつもの場所でお月様を見ておりました。

「お、今日もここに来ていたんだな」

「あ、柳也さん、こんばんは。私はほぼ毎日ここにいますよ」

「梨夜は本当に偉いよな、学校にも行って放課後は鬼姫様のところで勉強会だろ?中学校は卒業出来そうなのか?」

「はい、休んでいた分は・・・休みの日に学校へ行くようになったので、日数はぎりぎり足りるそうです」

「そっか、そっちの先生も大変だな。休日出勤だろ?」

「よくわかりませんが・・・部活の顧問だから休日出勤はなれているとのことです」

「なるほどほどな、でも梨夜が白崎学園を受験すると知った担任は相当に驚いたんじゃないか、進路相談はもう終わっているだろ?」

「・・・はい、質問ぜめで・・・大変でした。でも、私が自分が選んだことなら・・・全力で応援すると言ってくれました。冗談なのかはわかりませんが・・・学業特待なら内申書かなくていいから楽だとも・・・」

「内申に関してはたぶん冗談だとは思うが、梨夜に大してそんなこと冗談を言える先生なら大丈夫だろうな」


・・
・・・

「梨夜はいつも夜空を見ているけど、好きな季節とかはあるのか?」

「・・・?好きな季節・・・ですか?」

「おう、星だって季節によって見える星座も変わるだろう?いつの季節の何の星座が好きとかはないのか?」

「・・・好きな季節というのは・・・とくに・・・」

「もう時期冬になるだろ?冬は空気が澄んでいるから星が綺麗に見えるのは知っているだろ。冬と言えばオリオン座だな。1等星のペテルギウスから始まる冬の大三角形も良いが、俺は3つのつらなる星々の方が好きだな」

「柳也さんって・・・夕焼けに点数をつけたりお月様を見に来たとか・・・見た目からは想像出来ないくらいロマンチストなのですね」

「見た目からはって何だよ、悪口か。まぁ俺がロマンチストかは知らんがほとんど親父の影響だ。俺の親父はロマンの塊だからな」

「柳也さんのお父様ってたしか・・・今は一緒にいないのでは・」

すぐにはっとする、余計な失言をしてしまった。

梨乃さんから柳也さんはお父様と一緒に住んでいないことは聞いてましたが、そのことを直接柳也さんから聞いたわけじゃない。

「あぁ、梨乃あたりから聞いていたか。まったくあいつは何でもすぐに喋るかなら。まぁあいつのお喋りは今に始まったことじゃないし。あいつに悪気があるわけじゃないと思うから、軽く説教するだけで許してやろう」

「あの・・・その・・・梨乃さんは悪くないです、だから・・・梨乃さんを怒るのは・・・良くないと・・・思います」

「別に本気で梨乃を怒るつもりはねぇよ。あいつが梨夜に会いに行きたいと言い出した時にある程度覚悟はしていた。あいつがお喋りなのは俺も知っているからな」

「・・・それじゃあ、梨乃さんを・・・怒ることは・・・しないと」

「一応形だけは怒っておくぞ。ただあいつは俺と一緒で頑固だし、都合の悪いことは聞き流すから効果はないと思うが」

「そんな風には・・・見えなかったのですが・・・」

「梨乃はクラスでも人気なほどに人あたりがいいからな、長く付き合ってなければ頑固者だとは気づかないだろう」

「梨乃さんは・・・良い人です」

「梨夜は梨乃のことを気に入っているんだな。うざいし過保護だしわがままなところがなければ気持ちはわからんでもない」

「柳也さん・・・それは言いすぎです」

「言い過ぎと言われても事実だからなぁ。それにあいつも親父の影響をもろに受けて頭の中がメルヘンワールドだし」

「梨乃さんがメルヘンなのは・・・わかりますが・・・言い方ってものが・・・」

「あいつは今でも俺の親父を尊敬しているんだ。小さい頃はよく俺の家に遊びに来ててな。その度に親父があいつに色々な話を聞かせていたから色々な話を知っているんだ」

だから色々なお話を知っていたのですね。

「しかも親父にはこだわりがあって幸せな結末の話しかしなかった。だから当時の梨乃も親父の話を安心して聞いていたんだ。どんなに暗い話でも、どんなにつらい話でも最後は幸せな結末で話が終わる。だから安心して聞いていたんだよ、何度も何度も同じ話でもな」

確かに梨乃さんのお話もハッピーエンドで終わる話ばかりでした。

梨乃さん本人もハッピーエンドのお話がいいよねと。

梨乃さんは今でもきっと柳也さんのお父様のことを尊敬しているのでしょう。

幸せなお話を私にも聞かせてくれたのが何よりの証拠。