「最初は柳也さんたちのクラスの出し物が・・・見たいです」

「俺のところか?お化け屋敷だけど大丈夫か?」

「私・・・幽霊と呼ばれていたから・・・平気です」

「それはすごい自虐ネタだな」

「えぇ、私は嫌だよ。怖いの苦手だし、ぜったい面白がってみんな怖がらせくるし」

「梨乃、お前ってやつは・・・。普通に考えて真昼間なんだからお化けも幽霊もないだろが。第一、今日のお化け屋敷のメンバー全員をお前は知っているだろうが」

「梨乃さんが嫌なら・・・諦めます」

「えぇ、それはだめだよ、見たいなら見に行かないと後悔しちゃうよ。私は外で待ってるから行ってきなよ」

「お前も行くんだよ」

というわけで3人でお化け屋敷に行くことになった。

「お、柳也、お前さぼって何してるんだよ」

「俺はお客さんを連れてきたんだよ。いうなら呼び込みだ感謝しろ。梨乃とこいつと3人で一緒に入って問題ないだろ」

「最後にアンケート答えてくれるなら何でも良いよ」


・・
・・・

「教室という小さなスペースで・・・雰囲気作るのは大変ですよね」

「まぁ、内部事情を察してくれるのは嬉しいけれどちょっとくらい怖がってくれよな、結局梨乃はだだこねまくって怖がって外で待っているしな」

教室に入るとまずあったのは説明書き。お化け屋敷というよりお化けについての説明がたくさん書いてある。それを指差し説明してくれる生徒さん。

「これって・・・お化け屋敷というより・・・お化けの研究記録なのですが・・・」

「入ってすぐに怖い思いをさせるわけにはいかないだろ、説明は大事だ」


次に通された場所は暗いスペースに絵で描かれたお化けのお出迎え。
説明してる生徒さんもお化けの格好をしている。

「この人は入り口の説明にあったお菊さん・・・ですか?」

「人と言わないでほしいな、お皿を数えるお菊さんだから妖怪と呼ぶのが正しいぞ」

「お皿を・・・数え続けるなんて・・・賽の河原みたいで可哀想です」

「梨夜、妖怪を見て可哀想と思うなんて変わっているな」

「お菊さん・・・がんばってください」

「・・・」


次に通された場所は井戸の絵が描かれておりテレビから出てくる怨霊さんと、顔をタオルで覆っている男性が出迎えてくれました。

井戸と海の中から透明な何かがやってくる絵の完成度は高く雰囲気はかなりのもの。
しかもお二方はいっさい喋らず怨霊さんはずっと立っており、タオルの男性はずっと一点を指を指している。

「こ、これは・・・昔映画になった・・・やつですか?」

「よく知っているな、版権の問題で正式名称を明かすことは出来ないが雰囲気は出ているだろ?」

「・・・確かに、そう思います」

「ここは俺たちのお化け屋敷の中でも一番力を入れているスペースだからな。絵もわざわざ美術部のやつにお願いして書いてもらったからよく見ておけよ」


次に通された場所は・・・薄暗いスペースに絵が書いてあるものの誰もいませんでした。

「あれ?・・・誰もいないです」

「担当のやつはトイレか?まあここが最後の場所になるんだが・・・さぼるのはよくないな」

「さぼるのよくないって・・・柳也さんがそれを言いますか?」

ほんの少し戸惑っていると火の玉がぼ~っと現れました。

「火の玉・・・ですね」

「あぁ、担当のやつは絵の後ろに隠れて火の玉を吊るしていたんだろうな」

「ひょっとして柳也さん・・・自分のクラスの出し物のこと・・・把握してないのですか?」

「全部は無理だろ、俺は出し物から外されているわけだしな」

「でも狭いスペースで火を使うのは・・・危ないと思います」

「確かになこんな出し物、よくあの風紀委員会が許可したものだと思うぞ」

「風紀委員会が・・・チェックしているのですか?」

「あぁ、風紀委員会は全クラス、全部活の企画をチェックしてOKを出している」

「全部って・・・仕事量が・・・」

「だから普段からも忙しそうな鬼姫様がさらに忙しそうにしていたんだな」

「・・・すごい方なのですね」

「あぁ、鬼姫様はそれをほぼ1人でこなしているわけだから化け物だな。お化け屋敷のラストのスペースに鬼姫様を呼ぶことが出来ていたら学園内最怖賞受賞出来ただろうに」

「詩依さんに・・・伝えておきますね」

「やめろ、冗談じゃすまないからな」

火の玉のスペースを出てアンケートを記入して教室から出る。
梨乃さんは教室の外で待っていてくれた。

「梨乃さんも・・・一緒に入ってくれれば良かったのに」

「怖いの嫌だもん」

「井戸の亡霊とか、火の玉とか雰囲気出てたぞ」

「・・・?ねぇ・・・りっちゃん?火の玉って何の話をしているの?」

「はぁ?最後のスペースに雰囲気出てる火の玉があったろ?」

「りっちゃん、私をからかっているのかな?からかっているなら本気で怒るよ、最後のスペースはお化けの○×クイズだよ」

「・・・そうだっけ?」

「・・・りっちゃん?冗談、だよね?」