私は白鷺学園高等部を受験する。
中高一貫校ということもあり募集人数は他の学校に比べ圧倒的に少ないけれど倍率は高くない。
合格するだけなら可能性は十分にあります。ですが私が目指すのは特待生枠。
白鷺学園は私立なのでお金がかかる。ですが特待生となれば大半が免除される。
その後も勉強をがんばり続けなくてはいけませんが、勉強を教えてくれた詩依さんや先輩の期待に応えるためにもがんばらないと。
入学した後のことはまだ考えてはいけない気もしますが高等部編入ということは中等部から知っている人がいないということ。
すでに学園内でグループが出来ている中に飛び込んでいくということになります。
先輩は卒業してしまいますが、詩依さんや柳也さんとは1年間一緒の学園にいられる。
「おやおや梨夜君もずいぶんと物好きだね、他校からわざわざこの学園を受験しようなんて。詩依も他校からの編入生だったけど、この学園はそんなに学力が高いわけでもないし有名大学への進学率も高くない。もっといい高校もあるのに梨夜君も本当にこの学園で良いのかい?」
「・・・はい、私はその・・・学校にあまり行ってなかったので通知表が悪くて・・・そこを考慮しない学業特待を受験しようと思ってます」
「あぁ梨夜君は不登校生だったね。学業特待はたしかに入試の結果がすべてだから君にとってはよいかもしれないね」
「・・・はい、それに皆様には大変お世話になってますし。可能でしたら皆さんと一緒の学園生活を送りたいと思っております・・・ので・・・」
「学園の志望動機としては弱いけど、まぁ当時の詩依の志望動機も弱かったからそこは不問としようか。高等部編入の生徒たちの志望動機とはそういうものなのかな?」
「先輩、わたくしの動機が弱いとおっしゃいますがこの学園に誘ったのは貴女ですよ」
「そうだったっけ?私は覚えてないなぁ」
「・・・先輩?あとで個人的にお話がございます、お時間はありますよね?そうですねぇ、2時間はかからないと思います。も・ち・ろ・んお時間はございますよね?」
笑顔でやんわり問いかけてくる詩依さんにやってしまったという感じでひきつる先輩。
詩依さんは笑顔ですが目が一切笑ってない・・・やっぱりちょっと怖いです。
「と、と、とにかく私は・・・この学園に入るために・・・がんばります」
さきほどは目が一切笑っていなかった詩依さんもにっこりと笑う。
先輩も同様に笑う。やっぱりこのお二方は笑っていた方が良いと思います。
詩依さんは何か昔のことを思い出しているようでした。