こうして勉強会が始まりました。

受験勉強といいつつも基礎固め。

「まずは正負の計算から、終わったら呼んでくださいね」

詩依さんはなにやら自分の机に座り雑務をし始めた。
先輩と呼ばれた方は私のそばで問題を解くのを眺めている。
・・・相変わらず距離が近いのですが。

「梨夜君だっけ?問3はどうやって考えて解いたか教えてくれないか?」

「え、・・・なんとなくですけど、間違ってますか?」

「いや、数学はルールを勉強する学問だからね。公式、解き方、ルールに基づいて答えを導く学問なんだよ。答えより解き方、答えにいたる途中の過程が大切なんだ。計算が楽だからとか、なんとなくこうだろうと考えて解くのはご法度なのだよ」

「・・・なるほどぉ」

「梨夜さん、安心してください。先輩は学力トップクラスで教え方も本当に上手です。わたくしの成績も学年トップクラスですが先輩から教わっているところも大きいのですよ」

「詩依は頭が固いから教えるのに苦労しているけどね」

「先輩はいつも一言多いのですよ、だから先生方にも目をつけられるのです」

「目はつけられているけど実力で目をつぶってもらっているからね。これでテストの成績が悪かったらただの不良学生だからね、自由を得るためにこれでも私は必死なのだよ」

学年トップクラスの二人に囲まれて勉強会は続いていく。

たくさん間違っても丁寧に教えてくれる。

こんな私にとても親切にしてくれる。

嬉しい、けどどうしてだろう?

「丁寧に教えていただけるのは嬉しいのですが、・・・たくさん間違ってしまいます」

「間違いは誰にでもあるし気にすることはないよ。知らないことは悪いことじゃない。大切なことは間違ったあとにどうして間違ったのかを考えて次にいかすこと、あとはその繰り返しだね」

「間違うことは・・・悪いことじゃないのですか?」

「悪いことなんかじゃないよ、少なくても私はそう思うね。だって間違いがだめだったら人間は成長なんてしてきていないよ。間違いや失敗を恐れない人たちがいたからこそ科学もここまで発展してきたわけだし。間違いや失敗をしたなら次はもっとよい方向に向かうことが出来ればそれで良いと思う。その結果また間違ってしまっていても前回より少しでも良い方向に進んでいるなら。それに人生の正解なんて誰にもわからないしね」

「・・・なるほどです」

「まぁ先輩の小難しいお話はおいといてそろそろお茶の時間としましょうか。糖分が足りないと集中力も続きませんからね」

「お、今日も詩依がお茶を入れてくれるのか?ありがたやありがたや」

「先輩もコーヒーだけでなく紅茶を入れられるようになってください」

「えぇ嫌だよ。詩依は紅茶に対してだけはものすごく厳しいからな。茶葉に熱湯を注ぐ角度だけで文句を言われた時はどうしようかと思ったよ、本当に」